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被相続人が負担した配偶者の老人ホーム入居金は贈与税の非課税財産に当たり、課税処分を取り消した事例

2016/03/27

 今般、被相続人が負担したその配偶者の老人ホーム入居金が贈与税の課税対象とならないという裁決が発表されました。似たような事例等ございましたら、是非当事務所までご相談ください。

 

1.事案の概要
 (1) 相続関係
 被相続人は、配偶者が介護付有料老人ホームに入居した約1か月後の平成20年1月  26日に同ホームに入居したが、同年5月○日、死亡した。相続の共同相続人は、配偶者、長男及び長女である。
 (2) 介護付有料老人ホーム入居関係
 本件配偶者は、長男を代理人として、平成19年12月27日にM社(本件運営法人)との間で、入居者を配偶者、入居施設をN園(本件老人ホーム)とする入居契約(本件入居契約)を締結し、同月29日に本件老人ホームに入居した。
 本件入居契約によると、①本件配偶者は、入会金、施設協力金及び一時入居金を支払うことにより、終了事由(本件配偶者の死亡、中途解約又は解除等)がない限り、本件配偶者の居室(15㎡)及び共用施設を利用することができ、②本件運営法人は、本件配偶者に介護サービス、 食事の提供等のサービスを提供するとされている。また、③本件配偶者は、入会金1,050,000円、一時入居金7,350,000円(本件一時入居金)及び施設協力金1,050,000円の総額9,450,000円(本件入居金)を入居日までに、各種サービスに係る月額利用料238,500円を毎月、本件運営法人に対して支払う、④本件入居金のうち入会金1,050,000円及び施設協力金1,050,000円は、本件運営法人が初期投資した建物等の設備費に充てられ、在ホーム日数にかかわらず返還されない、⑤本件一時入居金の20%は契約締結日に遡って即時償却され、残額(定額償却部分)が入居年齢に応じた償却期間(60か月)で毎月均等に定額償却され、定額償却期間内に本件入居契約が終了した場合には、所定の返還金を返還するとされている。
 (3) 本件入居金と月額利用料の前払分524,673円の合計9,974,673円は、平成19年12月27日に本件被相続人名義の普通預金口座から、本件運営法人に振り込まれた。
 (4) 本件配偶者及び請求人らは、本件入居金は本件被相続人から本件配偶者に対する相続開始前3年以内の贈与であるとして、本件相続に係る相続税の申告をした後、本件入居金は贈与に当たらないとして、各更正の請求をした。
 (5) 原処分庁は、本件入居金は贈与に当たらないが、本件被相続人には本件入居契約に係る返還金5,292,000円に相当する金額(本件返還金相当額)の本件配偶者に対する金銭債権が生じており、これが相続税の課税価格に算入されるとして、一部減額の本件各更正処分をした。

 

2.本件裁決の要旨
 (1) 認定事実
 本件被相続人は、自宅で本件配偶者と2人で暮らし、本件配偶者を介護していたが、介護が困難になった(本件配偶者は、本件老人ホームへの入居時において8X歳であり、平成19年12月26日、要介護4と判定された。)。本件老人ホームへの入居直前において、本件配偶者が有していた資産は、自宅と普通預金約80万円であり、年金以外の収入はない。
 (2) 本件被相続人による本件配偶者の本件入居金の負担について
 本件配偶者には、本件入居金を一時に支払うに足る資産がないこと等にかんがみれば、本件入居金の支払時に、本件入居金相当額の金銭の贈与があったと認められる。原処分庁は、本件入居金の支払時において、本件配偶者は本件被相続人から定額償却部分について生活保持義務の履行を受けておらず、同部分は家賃等の前払金的性格を有するから、本件被相続人は本件配偶者に対して本件返還金相当額の金銭債権を有していると主張するが、   本件入居金は、一定の役務の提供を終身にわたって受け得る地位に対応する対価の支払であるから、定額償却部分を純粋な家賃等の前払分と判断することは相当でないため、原処分庁の主張には理由がない。
 (3) 本件入居金の負担は本件配偶者にとって非課税か否か
 相続税法21条の3第1項2号の趣旨にかんがみれば、同号の「通常必要と認められるもの」とは、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいうものと解するのが相当である。
 本件老人ホームへの入居に至る経緯等からすれば、本件被相続人による本件入居金の負担、すなわち、本件被相続人からの贈与と認められる本件入居金に相当する金銭は、介護を必要とする本件配偶者の生活費に充てるために通常必要と認められるものであると解するのが相当である。
  
 3.まとめ
 相続税法の趣旨が、生活費はその者の日常生活を営むに必要な費用であり、それに充てるための財産を取得しても、それにより担税力を生じないことはもちろん、当事者間の人間関係などの面からみても、これを課税対象にすることは適当でないという点にあることから、「生活費に充てるために取得した財産」の意義については、「生活費として必要な都度、これに充てるために贈与により取得した財産」をいうと解されている。
 本件被相続人は自宅で本件配偶者を介護していたが、本件被相続人による介護が困難となり(本件入居契約の前日には、要介護4と判定されている。)、平成19年12月29日、本件配偶者が本件老人ホームに入居し、翌年1月26日には、本件被相続人も本件老人ホームに入居し、そこで日常生活を送っていたことなどの認定事実に照らし、本件入居金相当額の金銭は「通常必要と認められるもの」に当たると解するのが相当であり、したがって、本件入居金相当額の金銭は、相続税法の非課税財産に当たるとした本件裁決の判断は相当である。
 原処分庁の主張は、本件配偶者に対して役務提供の義務を負い、定額償却部分に係る返還金義務を負っている者は本件被相続人ではなく、本件運営会社であるとの事実関係に即していないものであり、本裁決の判断は、結論において、適当なものといえる。

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